2016/04/12(火)第34回「INTO THE LEGEND」(ドラゴンクエスト1~3)


タイトル:INTO THE LEGEND (I~V)
サークル名:メルキド維震軍  作者:ソマさん
ジャンル:FCゲーム(ドラゴンクエストI~III)  購入イベント:コミックマーケット75(2008.12.29)~77(2009.12.29)
傾向:コメディ&シリアス・親から子へ継がれる伝説


 2008年11月に開催された「よつばの。読書会4th」*1に参加した際、主催の国里コクリさん(「よつばのはて。」管理人)が持ち込まれた同人誌の中にこちらの本があり、元々昔からドラゴンクエストの同人誌をよく読んでいた自分は喜びつつ手に取らせていただきました。

「親」であるこういちから「子」であるゆうじへの誕生日プレゼントとして渡されたのは、1983年に発売された「ファミリーコンピューター」と1986年に発売されたファミコンのカセット「ドラゴンクエスト」。初めてゲーム機を与えられた彼が体験するのは、冒険と成長の旅……というのが、この作品のさわりの部分。「冒険と成長の旅」というのは決して大げさではなく、実際にゆうじがゲームの中の世界に入り込み体験していく形でお話が進行していくという形で「ゲームに入れ込む」という子供の頃にありがちな行為を、そのまま「ゲーム世界に入れ込む」という「旅」に仕立ててあるのです。

 日常と現実の結びつけ方が非常に巧みで「DQ3をクリアした親から子へDQ1を渡す」というのは「DQ3の勇者がDQ1の子孫」というロトシリーズの構成とリンクしていますし、ゲームの世界にずっと入り込んでいるわけではなく、家族に呼ばれれば現実の生活に戻るという形になっていて「物語への没頭」→「現実への帰還」という、やはり子供の頃に体験したことが巧く描いてあります。

 特筆すべきは、「II」以降ゆうじがプレイすることになる「DQ3」での展開。発売当時、まさに少年少女を始めとしたゲーマーを驚愕させた「3からへの物語のリンク」が表現されたり、ショッキングであるはずの「冒険の書」*2の消滅を逆に「別れ」としてドラマチックに描いていたりと子の世代、親の世代両方にわたって意外性を込めつつも丁寧に描いてあるのが印象深かったです。

 古き想い出を喚起しつつも、新しき形で物語を魅せていく。ドラゴンクエスト発売20周年記念として制作されたこの作品は、隅々まで原作への想いが込められた素晴らしい作品でした。

*1 : 参加者各自がオススメの同人誌を持ち寄り読むというイベント。公式ページはhttp://planchette3.net/reading/

*2 : DQ3以降におけるセーブスロット。

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