2016/04/28(木)第47回「いっしょにゴハン食べたいッ」(オリジナル)
サークル名:こもれびのーと (Homepage) 作者:もみじ真魚さん
ジャンル:創作(食べ物) 購入店舗:COMIC ZIN(2013年1月)
傾向:彼氏と彼女とごはんのお話。食べたいときに食べるから楽しい。
料理好きの彼氏・晴彦くんと、ゴハンを食べるのが大好きな彼女・晴子さん。中華も和食も甘味も、ふたりで食べればきっとおいしい。
「ラブプラス」の寧々さんといっしょに日本列島を北は北海道、南は鹿児島まで自転車で走破するという「エクストリームラブプラスどうでしょう」を実行し、現在は世界一周旅行をしている「こもれびのーと」のもみじ真魚さん。「エクストリーム~」の「"日本"総集編」で「今度はアメリカ大陸横断」と描いてあって「これまた壮大なスケール!」と驚いていたら「カップルがいっしょにごはんを食べる」という意外な二人劇の作品でさらに驚き。この時まさか「世界一周に旅立つ」ことになるとは思わず、もみじさんにはさらに驚かされるわけですが。
さて、本作は「彼氏と彼女がごはんを食べる」というお話に尽きます。いろんなものを食べたがる晴子さんと、晴子さんに付き合って食べに行ったり料理してあげる晴彦くんの二人劇は、少人数に集中していることもあってころころ変わる表情がとても可愛らしく、そこに「料理」という彩りが加わることでさらに二人の表情が輝くので見ているだけでとても楽しいのです。
第1話のテーマは「ラーメン」。深夜1時という時間帯にラーメンが食べたくなった晴子さんは晴彦くんを誘って食べに行こうとする。とんこつラーメンに味玉とライスをつけて、チャーシューをごはんに乗せて味玉を割って食す……想像するだけで生唾が出てきそうな妄想を広げたけれども、店に着いてみればラーメン屋さんはスープが終わって閉店したばかり。絶望した晴子さんに晴彦くんが「袋麺を買って帰るか」と言ってはみたものの、晴子さんはさらに失望。でも、晴彦くんにはインスタントラーメンをおいしくするアイデアがあった。
夜ラーメンというのは実に禁断な食べ物。言葉だけならまだ自制は効きますが、晴子さんの浮かべる妄想はとてもリアルで、スープがかけられチャーシューがのり、味玉がパカッと割られて黄身がごはんに浸みていく様は実にリアル。そう、本作はふたりの表情だけではなく、もみじさんがオールフルカラーで描かれる「食べ物」の描写がどれも実にリアルなのです。照りといい焼き目といい、まるで香りがこっちまで漂ってくるかのよう。これについては実際見て頂いたほうが早いかもしれないので、まるごと全編がPixivにアップされている第1話を是非御覧頂ければと。
総集編である本作に収録されているのは第1~5話で、それぞれ「ラーメン」「イチゴ」「縁日」「ウナギ」「カニ」がテーマ。どれもただ素材をいただくのではなく、イチゴならパンケーキにしてみたり、縁日なら焼きそばやたこ焼きにプラスしてビールをつけてみたりと、それぞれブラスアルファしてあるのがニクいところです。それをふたりが美味しそうに食べて、さらに愛情を深めていくというのがもう。
時には学生時代を振り返ったり、時には桜舞うベランダという風情の中でのんびり食べたり、時にはウナギ屋さんに効能をそそのかされた晴彦くんが晴子さんに白状させられたりと、微笑ましいばかり。ただ食べるのではなく「恋人同士で食べる」というシチュエーションがさらにおいしさを増幅させてくれるのです。食べ物の描写も恋人同士の描写も力が入っているというのが実にいいですね。Pixiv上の第1話のタグに「末永く爆発しろ」「閲覧者爆発会場」と描かれていることからしてお察し頂けるかと。
現在は第9巻まで発刊されていて、総集編未収録の6巻以降は「おにぎり」「真夏ビール&からあげ」「サンマ」「お鍋」と、これまた美味しそうな上に身近なものばかり。おにぎりなんてごはん粒だけではなく、中の具のいくら漬けや鮭、海老天といったものまで描写が細かく実にそそられます。9巻には食材を提供してくれるアパートの大家・霧乃さんも登場し、今後もさらに晴彦くんと晴子さんのごはんワールドが広がっていきそうです。
ふたりの心を彩るのは、おいしいごはんとふたりの思い出。そのふたりを傍らから眺めつつ、ほんわかと楽しめるシリーズではないでしょうか。これからも楽しみにさせて頂きます。