2016/03/29(火)第19回「I LOVE POLAROID」(オリジナル)
サークル名:antiques (Homepage) 作者:ひなた翔さん
ジャンル:創作 購入イベント:コミックマーケット75(2008.12.30)※
傾向:ポラロイドカメラにまつわる出来事
※コミケ75では準備号を購入。完全版はメロンブックスにて3月に購入。
撮ってからすぐに現像されるお手軽さと、柔らかい独特な風合いなどが特徴で長年愛されてきた写真機・ポラロイドカメラ。愛好家の間で愛されてきた名機ですが、昨年の夏に専用フィルムの生産を終了することが発表され、現在市場で出回っている製品で販売が完了することになってしまいました。
こちらの作品は、そのポラロイドカメラに出会った女の子の物語。友人・ゆうが持ってきた、重みがあって独特の形をしたカメラを目にしたちかは、触らせてもらったり撮らせてもらううちにポラロイドカメラの魅力にはまってネットオークションで自分専用のポラロイドカメラを入手する。ゆうにアドバイスしてもらいながら、まず手始めに自らが育てている鉢植えの花や、降雪後に作った雪うさぎをレンズにおさめるちか。しかし、無情にも時間は過ぎ、ポラロイドフィルム生産終了の知らせを目にすることになってしまう。
新しいおもちゃを手に入れた子供みたいにポラロイドカメラを組み立てていくちかと、ポラロイドの楽しみと悲しみを分かち合ったゆうの二人により、まるでポラロイドカメラとの想い出を愛おしむかのように、ゆっくりとお話が展開していきます。カメラや被写体それぞれの描写も丁寧で、終盤に「3」と示されたフィルム枚数もその残り少ない時間を示しているかのよう。二人がカメラを手にするときの手つきも、愛しそうな細やさかが感じられます。
また、前後カラー口絵には実際にポラロイドカメラで撮影されたと思われる様々な風景が収録されていて、少しくすんだような、だけどほんわりとした独特の柔らかな色合いを楽しむことが出来ます。漫画とともに実際撮影された写真が収録されていることで、ポラロイドカメラを知る人だけでなく知らない人もその独特さを実際に見ることができる形になっているのが構成として巧み。作者であるひなたさんがポラロイドカメラに込めてきた愛情や感謝が感じられる、とてもあたたかい作品だと思いました。