2016/04/08(金)第30回「Railway Walker」(交通・鉄道)

タイトル:Railway Walker 9
サークル名:放射性同位体  作者:こときあやみさん
ジャンル:交通(鉄道)  購入イベント:コミックマーケット75(2008.12.30)
傾向:鉄道廃線紀行&廃線を舞台にした漫画


 同人誌界隈における鉄道ジャンルは非常に息が長く、既存鉄道の歴史の掘り下げや解説をしている本、仮想鉄道や擬人化、果てには記念切符の販売*1なども行われていたりと実にバラエティ豊か。今回取り上げさせていただくのは「廃線」ジャンルから、紀行+漫画という二つの視点から廃線を取り上げている「Railway Walker」シリーズです。

 こときさんの廃線本10冊目となる今回は、全国各地廃線巡りとライトテイストな廃線漫画が主な内容。廃線地巡りは旧・JR大社線(島根県)、旧・名古屋鉄道揖斐線・谷汲線(岐阜県)、旧・国鉄広尾線(北海道)、旧・国鉄興浜南線(〃)、旧・国鉄興浜北線(〃)、旧・国鉄大隅線(鹿児島県)、旧・JR山野線(熊本県・鹿児島県)、旧・鹿島鉄道(茨城県)、旧・高千穂鉄道(宮崎県)、旧・国鉄白糠線(北海道)、旧・国鉄渚滑線(北海道)と全国津々浦々。廃線跡とともに廃駅跡や旧沿線の風景写真に、路線の解説やこときさんの所感などが書き添えられています。中でも高千穂鉄道は洪水被害による休止から一年後に撮影されたもので、流木が絡まる鉄橋や「すべての営業を中止しています」という張り紙の写真はとても生々しく、本文にもあるように突然終わりを迎えさせられたという無念ささえ感じられました。

 漫画のほうはというと、いつもの廃線をテーマにした重めの漫画とはまた趣を異とした「家にいながら廃線跡を体験させられてしまう」少年のお話。シリーズ各作品で廃線の精霊といった形で出てくる少女・鈴音が、今回は「ドアを開けたらそこはいろんな廃線跡」といういたずらを仕掛けます。客間のドアを開ければ線路が撤去されたホームに連れて行かれるわ、トイレを開ければ「使用停止」と封鎖されている場所へと出される始末。しかし「忘れられて、人知れず埋もれていくのは悔しいから」という鈴音の心情は前出の廃線地巡りを読んだ後だととても重いものでした。

 20年以上前に廃線した路線もあれば、つい1年前(発行当時)に廃線した路線もあり、放置され荒れてしまっている場所もあれば、大切に保存されて時をとどめている場所もあるという風に、廃線をめぐる様々な光景や想いを読むことができるこの一冊。2013年現在も続刊しており、様々な地方の廃線を舞台に現状や物語が描かれています。

*1 : しかも現在使用されている磁気つき切符ではなく、旧来使用されていた硬券。

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