2016/03/20(日)第11回「秋桜」(らき☆すた)

タイトル:秋桜
サークル名:Channel☆K (Homepage)  作者:堂崎しんやさん
ジャンル:らき☆すた  購入店:コミックとらのあな 秋葉原店(2008.3.28)
傾向:シリアス・泉一家の過去と今と


 プロフィールや小説のページをご覧頂ければお分かりになるかと思うのですが、近頃は「らき☆すた」にハマっていたりします。こちらの作品は主人公のこなたたちを始めとしたゆるめのやりとりが特徴なのですが、そのほのぼのとした世界観の中で明らかに趣を異とする設定として主人公「泉一家」の存在があります。泉一家は父のそうじろうと主人公であり娘のこなた*1で生活しており、母・かなたは既に故人。作中で時折触れられる形*2で登場する彼女とそうじろうの過去、そして二人のことを間近で知るこなたと現在のことが描かれているのが今回の作品「秋桜」です。

 一年の中である日を迎えると、気が沈むそうじろう。娘のこなたもかがみを始めとした友人からの誘いを断り、ともに母が眠る場所へと墓参りに向かう。そうじろうにとってのかなたはというと、重度のオタクだった自分を受け入れ側で支えてくれた大切な妻。こなたは幼い頃からかなたのことを聞かされ、そうじろうにとっても自らにとっても大切な母であるということをよく知っている。かなたの墓前に立った二人は、在りし日のかなたのことを想い、今も見守ってくれているであろうかなたのことを想う。

 表紙には、秋桜の花畑にたたずむかなたの姿。それをめくれば、柔らかな彼女の笑顔とそうじろう・こなたに遺したかのような四行のメッセージが。紡がれる物語は彼女たちの過去と現在となっており、プロポーズのことやそうじろうが物書きとして開花する前のことなど、一つ一つがとても丁寧に描かれていて、そうじろうとこなたによるかなたへの想いが、そしてかなたのそうじろうとこなたへの想いが優しく、かつ哀しく描かれています。中でも「幼いこなたに、亡くなってしまったかなたのことを語るそうじろう」「現在のこなたに『お母さんいなくて寂しくないか?』と問いかけるそうじろう」といったシーンは淡々と描かれながらも、今なお覚えているかなたへの愛が切々と伝わってきます。

 物語はそうじろうのかなたへの感謝という形で暖かく結末を迎える……かと思いきや、秋桜の花言葉が書かれたページを挟み、突如黒ベタとかなたのモノローグ、さらには慟哭するそうじろうから「最期」が始まります。二人のかなたへの想いが前提となっていただけにこのシーンはあまりにもストレートすぎて、正直言って「ここまで突っ込むのか」と大変驚かされたものですが、さらに最終ページにまで「想い」が描かれているという「積み重ね」の巧みさが。悲しい物語を悲しいだけで終わらせることなく、優しさや暖かさが込められた素晴らしい作品でした。

*1 : 第2巻からは姪のゆたか、単行本未収録話からは留学生のパティ

*2 : 単行本第5巻「ここにある彼方」など

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