2016/04/21(木)第41回「-PRIMURA-」(オリジナル)

タイトル:-PRIMURA-
サークル名:ゆきあ屋 (Homepage) 作者:あやめぐむさん
ジャンル:創作(SF) 購入イベント:コミティア89(2009.8.23)
傾向:古代遺跡に残されていた記憶媒体に残る、少女の映像。


 辺境の地・ヴァーリアで三千年前の高度都市「アグロネマンサ」の遺跡が発見され、発掘が開始してから半年。研究者・レギは最深部にまで辿り着いたが、固い扉に行く手を阻まれてしまう。仕方なくその一角にあった研究施設跡で調査をしていると、壁から一枚のディスクを発見する。レギがコンテンツを見ようとしたところ、17099ものファイルが記録されていた。戸惑いながらも手がかりのために再生しようとすると、モニターから一人の赤ん坊――「プリムラ」の映像が流れ始めた。

 何故高度に発展し繁栄していた都市が滅んでしまったのか。そして、何故少女の記録が残っていたのか。最初は研究のためにただ映像を見ていたはずが、都市のあらましとともに彼女の姿に惹かれていく姿はまるで親馬鹿のようで、さらには立体映像で少女・プリムラの姿を再現しようとまで。同僚も呆れて「もういない」という現実を突きつけられてしまうわけですが、赤ん坊の頃から一ファイルずつ収録され、少しずつ成長していくプリムラのことを見守りたいという気持ちも伝わってきます。

 突然訪れた「終わり」と、そこから始まる長い空白。レギが追おうとしたことは決して無駄ではなく、遠い遠い時間から渡されたバトンを受けるかのように結実していきます。「全てを見る」ことに意味があり、だからこそ任せることが出来るということなのでしょう。「"父"が遺したもの」、そして「"父"が受け継いだもの」。少なからず失ったものもあり、悲しさも込められた物語ではありますが、その出来事を経た末の最後の『彼ら』の笑顔には、こちらまで笑顔になるような暖かさがありました。

「見守ること」が鍵というのが意外ではありましたが、確かに人が生きていくのには誰かに見守ってもらうことが大切だと納得出来る物語でした。
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